「日本は美しい」
何人もの外国人に言われても、私はさっぱり理解できなかった。
「確かに日本は美しい」
そんな私がそう思えるようになった、そのきっかけをくれた英語のガイドブックだ。
なんでわざわざ英語のガイドブックを使うのか。日本語の方がよっぽど詳細で正確な情報を得られるのに。日本語に不自由なわけではないのだから、日本のガイドブックを使う方が…と考えるのが普通だ。自分でもそう思う。でも、改定されると買い直すくらいこのガイドブックが気にっている。最近のは写真が増えたが、昔のは日本のガイドブックなら必須な綺麗な写真も皆無。不親切極まりない、ガイドブックとしてどうなのという代物だ。
私は海外に行くときもLonely Planetのガイドブックを愛用している。地球の歩き方や海外のガイドブックを買ったこともあるのだが、結局これに戻ってしまった。なにがそんなに良いのか?端的に言えば、一番感動を与えてくれるガイドブックだからだ。
旅に何を求めているか。大多数の人は日常とは違った体験、非日常による感動ではなかろうか?美しい景色、美味しい食事、それらももちろん大切だが、何と言っても心揺り動かされる経験。つまりは感動。それが得られるからわざわざ大金を払って出かけるのでは?少なくとも私はそうだ。
そんな私にこのガイドブックはとても良い。写真が少ない。だから行って見た風景が新鮮でより感動的になる。事前に綺麗な写真を見ているとこの感動は半減してしまう。事前情報の少なさが期待を増幅しそれがさらによく見せることになる。おそらく日本のガイドブックの美しい写真を見てから行っても、さほどの感動は得れられないのではと思ってしまう。情報の少なさはこと旅に関して言えば欠点ではない。
香港に行ったときにこんなことがあった。返還されてまだイギリスの香りが残っている頃なのでかなり前になる。ガイドブックに載っていた徒歩でのツアーコースを歩いてみた。その時の体験は今でも忘れられない思い出になっている。公園で自分で飼っている小鳥の鳴き声を楽しむ人々。フェリーから見る香港の景色。ちょっと想像もできなかった体験だった。
日本だと大内宿が一番だろうか。事前情報で得られたのは、江戸時代の街道の宿場の風景が保存された場所というくらい。私は箱根の関所みたいな場所なのだろうかと思い描いていた。当時の版だと写真はなかったか?現行のだと何枚かあったように思う。そんな状態であの風景に出くわした。江戸時代にタイムスリップでもしたような錯覚に陥った。あのときの感動は忘れられない。素晴らしい体験だった。
そんな体験を他のガイドブックが与えてくれるだろうか?
確かにグルメ情報に関してはお世辞にも良いとは言えない。その点を差し引いても、旅の醍醐味を十二分に味あわせ、感動をスポイルしないという意味で、このガイドブックは一番だと思う。英語に関しても、もともと実用書なのだからそんなに凝った表現など使われるはずもなく非常に理解しやすい。英語の実用という意味でもおすすめだ。